新しい「器官」としての筋膜
米ニューヨーク大学などの研究チームが、体内の「間質」と呼ばれる空間の構造と分布に関する詳細を研究し、「人体の新しい器官を発見した」として、27日の学術誌に論文を発表した。(CNN)
これまでの常識
これまで筋膜(fascia)は筋肉や腱・靭帯といったものとは異なる無駄なものとして扱われていた。
私たちが解剖学を学ぶとき、解剖学アトラスや解剖アプリで人体について学ぶのだが、実はそのように鮮明に観ることはできない。
解剖を行ったからわかることなのだが、皮膚の下には皮下脂肪がまばらに点在していたり、
皮下脂肪とリンパ節や神経終末が重なっていたりしてして、とても複雑で、生々しくてごちゃごちゃしている。
また、それぞれの筋肉は筋膜という硬い鞘のようなもので包まれており、それが階層的に立体的に広がっている。
さらには例えていうなら、ヒトの形をした風船の中でクモの巣が縦横無尽に張り巡らされていて、そのクモの巣には色々なものがひっついたり、重なったりしているというとイメージしやすいのかもしれない。
つまり、解剖学アトラスや解剖アプリを使って知ったはずの人体は、筋膜という組織が欠落した、不完全な状態だということになる。
これからの常識
中世までは天動説が信じられていたが、望遠鏡の発明を機に地動説へと移行していった。
筋膜リリースやトリガーポイントに代表される徒手療法や、ピラティスやヨガなどの運動療法の中では筋膜(fascia)組織について一定の注目が集まってはいたが
この度、医学的観点から空間と構造の分布に関する器官として認識されたということは、これまでの常識(医学の礎)が変わってくることを示している。
今回の研究では間質空間ががん細胞の拡散を助け、がんが体内で転移する導管の役割を果たしている可能性があることも分かった。間質液を調べれば、がんの診断に役立つかもしれないとシース教授は述べ、がんだけでなく、ほかの疾患や体内の機能に関する医師の考え方を変えさせる可能性もあると話している。
昔はうさぎ跳びが身体を鍛える手段として用いられていたが、今ではほぼ行われていない。
アスベストは「奇跡の鉱物」として重宝されたが、今では静かな時限爆弾と呼ばれるようになった。
常識とは時代が変化すると、誤った認識になりかねない。
自然の理に沿って、論理的な思考で、新しいものにも柔軟に対応したい。
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