肩の動かし方が左右で異なるので腕が動かしづらいし、腰も慢性的に痛い。
きっと骨盤が歪んでいるんじゃないかと思う。
そういってスタジオを訪れてくれたのは、ベンチプレスで100kgを楽々と持ちあげることができる筋肉質な男性でした。
トレーニングも怠らないし、プロテインも飲んで筋肉の回復にも意識を向けています。
そんな筋骨隆々の彼が、腰が痛かったり、肩まわりに不調を感じるのは骨盤の歪みが原因なのでしょうか。
そもそも骨盤は歪むのか?
骨盤が歪んでいるという言葉は、使い勝手が良いのでよく用いられます。
これが骨盤周辺のイメージですが、骨盤は”白い繊維質のもの”で骨と骨が結ばれています。
この”白い繊維質のもの”というのは靭帯(じんたい)と呼ばれるもので、筋肉のように伸縮する性質は持ち合わせていません。
どちらかというと”硬く” “伸びにくく” “互いを引き合う”性質を持ちます。
靭帯が切れた。といった言葉を聞いたことがあると思いますが、強い力が瞬間的に加わることで切れることがあります。
そんな強固な結合組織 “靭帯” で、がっちり骨と骨を引き合わせている骨盤が、歪むことはよほどのことがないかぎりありません。
骨盤は空間をつくりだす
骨盤はいくつかの骨から構成されており、それらがバラバラにならないように、靭帯で形作られています。
形作られた骨盤は、このように内側に空間を有します。
それは、からだの内側に収まっている内臓を受けとめたり、いつか宿す命を育むための空間です。
これらの空間が歪むということは、生命の維持管理機能が低下するということですし、
出産を経験した方は解ると思いますが、骨盤が数センチ拡がるだけでも想像を絶する痛みと時間を要します。
骨はポジションを変える
骨盤は形を変えませんが、骨盤とつながっている背骨や脚の骨などは形を変えます。
例えばポケットに財布を入れているだけで、下から伝わる圧力は変化して、上部の背骨がぐにゃりと曲がります。
もちろん実際のからだ(背骨)にはたくさんの筋肉が付着していて張力によって構造が保たれるので、そう簡単には歪みません。
歪むのは骨盤ではなく、骨盤から力を受けたからだの周りの骨であり、骨に付着している筋肉で、歪むというよりは形を変えるという表現の方が適切であると思われます。
大切なことは快適に空間を保つこと
それらが形を変えるのは内部の空間(構造)を保とうとするためであり、正常な反応です。
それはボートを桟橋に係留されているのをイメージすると少しわかりやすいかもしれません。
水に浮かぶボートが “骨” で、ボートを繋いでいるロープが “筋肉” です。
ロープが緩んでいなければ、ボートは桟橋に当たって傷む可能性がありますし、
逆にロープが緩みすぎていると、ボートは流れて他のものに当たって傷む可能性があります。
注意すべきは、空間(構造)の中で自由に位置を変えながらも、お互いに力を伝え合うことです。
上半身と下半身をつなぐのが骨盤
不調を感じていた男性のからだの前面は、指で軽く押さえただけで痛みを感じる状態でした。
つまり、張力がかかり過ぎていたのです。
バランスよくトレーニングをしているつもりでも、私たちは目が前に付いているのでついつい前面へと意識が向き、からだ全体でのバランスを忘れて崩してしまいがちです。
そのアンバランスに気づかせてくれるのが、動きの不調や慢性的な痛みだったりするのですが、多くの方が不調を感じる部位の筋力低下だと考えてしまうようです。
痛みや不調は、からだが発しているサインです。
できることなら見逃さないようにして、からだの状態をバージョンアップするチャンスにしたいですね。